モーターサイクルや電動アシスト自転車などの開発を手がけるモビリティ事業等を手掛け、世界の人々に新たな感動と豊かな生活を提供することを目的に、「感動創造企業」をめざすヤマハ発動機株式会社。
(ヤマハ発動機株式会社さまのHPはコチラ)
開発業務を担う各部門の管理職たちと未来に向けてのロードマップを描く際、互いの専門性の高さや視点の違いから、“伝わらなさ”を感じてしまうことがあったそう。
そこで、プロコーチの樋口さんとの連携のもと、ツナグtobeでは管理職を対象とした研修でMBTIワークショップを実施。スムーズなコミュニケーションが取れる環境づくりのサポートをいたしました。
昨今、チームビルディングなどでも注目が集まるMBTI。今回はその具体的な研修内容と、実際に受講した感想を、ヤマハ発動機さまに伺いました。
【課題】 ・開発部門各グループの専門性が高いため、業務における相互理解が進まない環境 【対策】 ・MBTI研修で、自分と周囲のコミュニケーション特性や違いへの理解を促進 ・個別コーチングで個人と組織のミッション・ビジョンとの繋がりを言語化 【効果】 ・パーソナリティを認識することで、相手の思考を想像したコミュニケーションへ変化 ・コーチングを通して個人の想いと組織の目標の繋がりを再認識 |

(写真:ヤマハ発動機株式会社 味戸さん、樋口さん)
味戸 智史さん
ヤマハ発動機株式会社のモーターサイクル商品開発部門でグループリーダーとして技術開発を担当。
樋口 咲恵さん
ツナグtobeとともに研修講師を務める。コーチングを担当し、個と組織の繋がりを支援する立場でヤマハ発動機さまに伴走している。
石川 博基
株式会社ツナグtobe代表。今回の研修ではMBTIワークショップを担当。企業の人事課題に対して、MBTIを含め全方位からアプローチできることに強みを持つ。
※「MBTI(Myers-Briggs Type Indicator)」とは?
ユングのタイプ論をもとにした、世界50カ国以上で活用されている国際規格に基づいた性格検査。「興味関心の方向(外向・内向)」「ものの見方(感覚・直観)」、「判断のしかた(思考・感情)」、「外界への接し方(判断的態度・知覚的態度)」の4つの指標によって、性格を16種類のタイプに分類し、一人ひとりが、自分の特徴や強み、人と人の違いを理解し、 自分をより活かすための座標軸として用いることを最大の目的として、活用されている。
“議論の入口が違う”をどう乗り越えるか。MBTIとコーチングで対話の改革
──まず、ヤマハ発動機さまが抱えていた課題を教えてください。
味戸さん:
開発業務を担う各部門の管理職たちとともに、技術計画のロードマップを検討するなかで、話をすり合わせることが難しいと感じていました。
自分が議論したいポイントに対して、違う観点から会話が始まってしまったり、論点がズレてしまったり、相手とのコミュニケーションに課題を感じてしまう場面が多くて…。
自分のやり方がまずいのか、相手とのコミュニケーションのスタイルが合わないのか。そんな悩みを樋口さんに打ち明けたところ、コーチングのご提案をいただいたのが今回の取組みのはじまりです。
──樋口さんは味戸さんの悩みを聞いて、どんなアプローチを検討しましたか?
樋口さん:
味戸さんは、長期的な視点で物事を考えるのがすごく得意な方だと思うんです。だからこそ、自分と同じ目線でロードマップを引けないことに歯痒さを感じていると思っていて。
とは言え、味戸さんのお話を伺う限り、他の管理職の方たちもそれぞれ個性や異なる強みを活かして活躍されている印象を受けました。なので、わたしたちで強みの相互理解をアシストできれば、よりスムーズなコミュニケーションができるようになると感じたんです。
せっかく管理職のみなさんを巻き込むのなら最大の効果を感じてもらいたいと思い、コーチングと併せてMBTIのワークショップも提案をさせていただきました。
──具体的にどのようなプログラムなのでしょうか?
樋口さん:
各部門で管理職が実現したいことをグループの施策に反映する目的で2回のコーチングを行うことと、それぞれの自己理解・他者理解を促す目的で3時間×2回のMBTIのワークショップの実施をご提案しました。
流れとしては、コーチングで各部のミッション・ビジョンを自分ごとに落とし込み、ご自身の想いを言語化したあと、MBTIワークショップで自分の特性や他者との違いを認識しながら、それぞれがやりたい施策をシェアしていきました。
──ちなみに、味戸さんはMBTIについてご存じでしたか?
味戸さん:
まったく知りませんでした(笑)。ただ、樋口さんはうちの課題をよく理解してくださっていると感じていたので、「とりあえずやってみよう」と信じてお願いしました。
管理職にこそMBTIを。“わかり合えなさ”を乗り越える対話のヒント
──石川さん視点で、企業がMBTIを取り入れるメリットを教えていただけますか。
石川さん:
組織のなかでコミュニケーションのハブを担う管理職にこそ有用なのがMBTIだと考えています。
管理職は関係各所や部下など、コミュニケーションを取る相手が多いですよね。多様な相手と対話をするときには、自分自身と他者の認知・判断の傾向を理解しておくことが非常に重要です。
自分のコミュニケーションスタイルや尺度を正しいものとして向き合うと、自分と違う人が現れたときに「この人は仕事ができない」と相手を切り捨ててしまうリスクが上がります。
MBTIを知ることで、自分と相手の違いを捉えて円滑なコミュニケーションを取ることができるのが大きなメリットですね。
また、ビジネスシーンでは、自分と他者を比較して自分を卑下したり、過剰に不安を感じてしまう人もいると思うのですが、MBTIを踏まえて考えることで、「劣っているのではなく、性格の違いなのだ」と気付けて、自己肯定感が高まる効果もあります。
──MBTIが異なると、具体的にどのような認知の違いが起こるのでしょうか。
石川さん:
例えば、同じミッション・ビジョンを持っていても、MBTIのタイプが違うとモチベーションの入り方や維持の仕方が違うんですよね。
未来を抽象的に考えることにワクワクする人もいるし、具体的に落とし込んで計画を引いたほうがやる気が出る人もいます。自分とは異なるタイプがあることを知ると、「やる気がないのではなく、うまくスイッチが押せてなかったのだ」と理解できて、より意見を受け止めやすくなったり、自分ごと化しやすくなったりするんです。
──なるほど。コミュニケーション課題を抱えている企業にマッチしそうですね。
議論のズレは誤解ではない。認知のスタイルが異なることを知る
──樋口さんがコーチングを通じて感じた変化はありますか?
樋口さん:
管理職のみなさんは同じ組織に属しているので、共通している部分もありつつ、今後やりたいことについては個性が出ていましたね。
普段の開発の現場では、各々のやりたいことを語り合う機会はあまりないと思うので、想いを言葉にして共有できる形にしたことは意味があったと感じています。
味戸さん:
たしかに。日常的に真面目に未来について話すことや自分のやりたいことの背景や想いまで語る機会はほとんどないので、相手が何を考えているか、何を重視してるのかを話すきっかけをもらったのは大きかったです。
樋口さん:
いまは、コーチングのなかで出てきた想いをまとめてワークショップ形式で共有したり、組織のビジョン・ミッションとの繋がりや重なりを確認するプログラムを進めているところです。
──味戸さん視点で、研修を受けてご自身や組織に変化を感じることはありますか?
味戸さん:
ロードマップの議論のなかでズレが起こる背景にある「相手の考え方や表現方法」についての相互理解が、今回の研修を通して深まったと思います。
ロードマップを書いた本人は、自分なりの考えでアウトプットしているはずですが、背景や想いまではすべて書ききれない。そこで、ロードマップの書き方や議論のフォーマットを見直したりと、それぞれが相手の想いがうまく汲み取れるよう、議論の“前提を揃える議論”をするようになりました。
お互いを理解していく過程のなかで、「〇〇さんはこう考えたのかな?」と相互理解をするための会話が広がっている気がします。
──石川さんが実施したMBTIワークショップに対しては、どんな反響がありましたか?
石川さん:
「タイプでこんなに考え方や捉え方が違うんだ」ということを身を持って感じた方が多くいましたね。
「これまで会議のなかで、自分と反対のMBTIタイプの人の意見をスルーしてしまったり、その人が声を出しにくい状態を作ってしまっていたのではないか」という声もありました。
味戸さん:
そういえば、会議内の会話でも「こういう傾向があるよね」と相手の性格を踏まえて受け止めるような発言が増えました。
石川さん:
すごくいいですね! 今回のワークショップで得た気づきを定着させるためにも、相手を決め付ける・否定するという文脈ではなく、日頃の社内コミュニケーションにおいて「違いが出てるよね」というポイントを面白おかしくリマインドしていくことが大切だと思います。
一人ひとりが納得して動ける組織に。自律分散を育むコーチングのこれから
──まだプログラムの途中ではありますが、今後の展望があれば教えてください。
樋口さん:
ヤマハ発動機さまには役職に関係なく、自分たちがやるべきことを声に出して実行していく風土があると感じています。わたしはそのカルチャーの後押しをしたいと考えていて。
「やるべきこと」と「ミッション・ビジョン」に繋がりが持てると、共通の目標に向かってそれぞれが考え行動するサイクルが加速して、“自律分散型組織”が形づくられていくと思っています。引き続きコーチングでご支援をしていきたいですね。
味戸さん:
うちは「上がやれと言っているからやる」というスタイルではないので、そのぶん納得感も必要ですが、自由に意見を発信できるという良さは活かしていきたいです。
開発者それぞれに想いがしっかりあるのがヤマハ発動機の強みだと思いますので、強みを生かした組織づくりを進めていきたいですね。
──MBTIとコーチングで相互理解が深まった様子が伝わってきました。本日は貴重なお話をありがとうございました。